友ジイの「一緒に麻雀やらねぇぞ」が救った命
コロナになって少し落ち着いたが、ここ10年、高齢者の間で麻雀を始める人は明らかに増えた。そんなジジババのエピソードを、各地のマージャン教室や大会に積極的に参加している「雀聖アワー」福山純生氏が、つづります。
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東1局
麻雀中によく出る話題は役満の話。四暗刻だの国士無双だの字一色だの自慢話にはキリがないが、高齢者の場合、実はもっと多い話題は病気話でもある。脳梗塞、心筋梗塞、がん、白内障。こちらも枚挙に暇がない。
ヒデさん。御年78。服装のセンスはなかなかのもので、テンガロンハットがお気に入り。麻雀の腕も達者で、様々な大会で好成績を収めていた。
だが春先、同卓したときに、わずかながら手が震えており、牌を倒してしまうことがあった。また左側にツモ山があると、牌が積まれていない場所に手を伸ばすこともあった。麻雀仲間から病院に行くよう勧められていたが、医者嫌いなんだと突っぱねていたヒデさん。しかし夏になるとぱったり来なくなった。猛暑だから億劫なのかなと思っていたら、秋になってやってきた。相変わらずのテンガロンハット姿だ。
「いやあ、脳梗塞だったんだよ。ほら、牌をポロポロ倒してたでしょ。あの日の帰り。ケンさんが、病院に行かないと一緒に麻雀やらねぇぞって脅かすんだよ。ワシはケンさんに負け越してたもんだからさ」
早期発見だったことが幸いし、後遺症も残らなかったという。しかもついでに緑内障の手術まで完了していた。
大の医者嫌いが病院で診てもらうきっかけとなった殺し文句「一緒に麻雀やらねぇぞ」。そう脅した御年80のケンさんも、心筋梗塞の手術を経ている。
「オレは麻雀中に倒れてね。救急車で運ばれながら懇願したんだよ。とにかく麻雀だけはできるようにしてくれってね」
ふたりとも麻雀を続けたいがために病気を克服。そりゃぁ強いわけである。
東2局
麻雀を始めたきっかけ。ジジイたちは圧倒的に職場が多い。
御年69。独身寮暮らしが長かった元銀行マンのジジイ。寮の規則では無断外泊NG。でも朝帰りはOK。そんな摩訶不思議な規則のおかげで、週7日は麻雀三昧。遅くまで残業しようが、朝まで飲んで帰ろうが、必ず卓が立っていたと豪語する。超人か⁉
御年76。インドやナイジェリア等、海外赴任が多かったジジイ。赴任地では日本人同士お互い近くに住むことが多かったため、コミュニケーションと言えば麻雀。こちらも週7日。
対照的にバアさんたちは多種多様。無理強いもあれば、ボケ防止というケースも多い。
御年61。夜な夜な集まる父親の麻雀仲間に肴を作って酒を運ぶ青春時代。「小便してくるから、ここ来たらリーチしてくれ」。そんなことまで頼まれていたらしく、イヤでも覚えてしまったとのこと。親父さんが他界した今では、週5日で麻雀。公務員か⁉
御年80。10年前に脳梗塞で倒れた旦那がリハビリデイサービスに行く間の3時間。これが唯一の息抜きと意気込み、ボケ防止にもってこいと聞いた麻雀教室へ通い気分転換。一昨年、旦那を看取ってからは、週5日は麻雀。
ジジババの四方山話を聞けば聞くほど、日本の経済成長は麻雀が支えていたのかと見紛いそうになる。きっかけはどうであれ。