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早漏にも定義がある!平均挿入時間ともども現役医師が教えます

 男性専門外科クリニックで働く現役医師・吉江秀和氏が、性に関する興味深い論文を紹介する好評企画。今回は気になる男性も多いであろう、〝早撃ち〟に関するお話です。むやみに悩まないためにも、正しい知識を学んでおきましょう。

早漏の定義とは

「早漏の医学的定義ってあるんですか?」とよく聞かれるのですが、実はこれ、昔から諸説あります。それこそ精神医学的な定義から、医師の個人的見解まで。エビデンス・ベース(根拠に基づくもの)よりもオーソリティー・ベース(権威者の主張に基づくもの)の定義がかつては多くありました。

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 この状況を改善しようと国際性機能学会(ISSM)主導でエビデンスに基づいた早漏の定義の検討が開始されました。

 2007年10月にオランダ・アムステルダムで第1回会合が、13年4月にインド・バンガロールで第2回特別委員会が行われた結果、早漏の定義が次のように作成されました。

【1】初体験からほぼ毎回挿入後1分以内に射精してしまう(終生型早漏)。あるいは、前は我慢できたが最近射精が早くなり約3分以内になった(後天性早漏)。

【2】ほぼ毎回、射精を遅らせることができない。

【3】そのことで、悩んでいる(苦痛、煩わしさ、欲求不満、セックスレスなど個人的ネガティブな結果がある)。

 この3つの基準を満たすということが提案されました。前記【1】のように早漏は終生型と後天性の2種類あり、後天性は終生型に比べ、高齢で、勃起不全、他疾患の合併、心血管系の危険因子の発症率が高いこと、そして射精までの時間がやや長いことが特徴です。

 これらを満たしていたらエビデンスに基づいた「早漏」となりますが、注意点が。「約1分以内」は絶対的な区切りではありません。1分以内でも悩みがなければ早漏の診断価値はなく、逆に1分以上でも悩みが深く治療希望が強ければ早漏と判断する場合もあるということですね。

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 ちなみにこの定義は膣性交にのみ当てはまり、オーラル&アナルセックスはこの限りではありません。

平均的な挿入時間は?

 では、そもそも男性の挿入時間ってどれぐらいが普通なのでしょう。挿入時間とその現状に不満を持つ男性がどれくらいいるか(我慢時間の理想と現実のギャップ)と併せ、2009年、「The Journal of Sexual Medicine」という医学誌に掲載された研究があります。

「一般男性における膣内射精時間の分布に関する5か国調査」という題名のこの論文は、オランダ、スペイン、イギリス、トルコ、アメリカの5か国で射精時間を測定。少なくとも半年以上安定した異性関係にあり、定期的に性行為をしている男女合計474カップル(男性の平均年齢38・5歳)を対象として、1か月間タイマーを使って挿入後から射精までの時間が調べられました。

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 結果は挿入後~射精の時間の中央値6分(最短トルコ男性4・4分、最長イギリス男性10分)でした。また、射精までの時間が2分より早い男性は、全体の下位6・5%、1分以下の男性は2・95%に入ることが示されました。

 この研究では「男性がその時間で満足しているか」「早漏治療薬を積極的に使いたいか」についても調査されていて、男性の38%が挿入時間の現状に不満(中央値より0・8分射精が早い)を持ち、23%が早漏治療薬の使用を希望(同1・1分早い)していることがわかりました。また、調査では本人に何分我慢できたかわからないよう時間を計り、本人が想像した経過時間と照合、その差が1・9分(31%の過大評価)であることもわかっています。不満を感じている人が多いものの、実際は0・8分早いだけですし、自身は現実よりも〝我慢できている〟と感じているわけです。著者らは、自己認識した射精までの時間に不満があることと医学的な早漏を混同しないよう注意が必要であると結論付けています。

まとめ

 今回の論文から、早漏には定義があるものの、早漏であるかどうかは自身が悩んでいるかにも関係していることがわかります。正直、悩み過ぎるのも良くありませんし、「射精を我慢できる時間に不満がある。早漏治療を始めた方がいいのかな」という方を時々見かけますが、それは勘違いで、実は治療の必要はナシってことも少なくありません。動物的には射精が早い方が優秀ですし、何より大事なのは時間よりパートナーへの愛情ではないでしょうか。

 吉江秀和(よしえ・ひでかず)医学博士、大手男性専門クリニック本院院長。男性医学の第一人者である熊本悦明氏が立ち上げた「東京テストステロン研究会」に所属し、共に男性医学の啓蒙を行っている。人気サイト「ペニス偏差値チェッカー」も主宰。

【引用論文】

Serefoglu EC, McMahon CG, Waldinger MD et al. An evidence-based uni- fied definition of lifelong and acquired premature ejaculation: report of the second international society for sexual medicine ad hoc committee for the definition of premature ejaculation. Sex. Med. 2014; 2: 41–59.

Waldinger M, Mclntosh J and Schweitzer DH:A five-nation survey to assess the distribution of the intravaginal ejaculatory latency time among the general male population. J Sex Med 2009;6:2888-2895

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