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【プロ野球】「野球バカとハサミは使いよう」山田隆道著

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“球春到来”に合わせ、2012~13年にかけて東スポ紙面連載された往年のプロ野球選手から処世術を学ぶコラムを復刻します。選手のエピソードから導かれる教訓は日々の生活に役立つこと間…
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組織に才能を閉じ込めるな【野球バカとハサミは使いよう#30】

宣銅烈の日本球界入りは球団の柔軟な対応力によるもの 近年、韓国のプロ野球から日本球界に移籍する選手が増えている。現在ではオリックスの李大浩が代表格だろう。韓国球界で2度の3冠王に輝いただけあって、その打撃は剛柔併せ持った一級品。来日1年目の昨季は打点王を獲得し、今季もここまで好成績を維持している。  そんな韓国組のパイオニアといえば、1995年オフに中日入りした宣銅烈だろう。宣は1年目こそ不慣れな環境に苦しんだものの、2年目以降は本領を発揮した。150キロ超のストレートと高

「働く男」は、時に「できる男」を超える!【野球バカとハサミは使いよう#11】

元々右打ちなのに左打者になった野村謙二郎 出世を目指すサラリーマンの中には「自分はチャンスに恵まれない」と嘆く人も多いことだろう。チャンスをどう生かすかの前に、チャンス自体が訪れない。つまり、ふがいない現状を運のせいにしているわけだ。  そこで紹介したいのが、広島・野村謙二郎のエピソードである。ご存じ、現役時代は俊足巧打のトップバッターとして、通算2000本安打を達成した名選手であった。  そんな野村は小学生で野球を始めると、瞬く間に地元で評判の選手に成長。高校進学後は右

〝偉い人〟に媚びるのではなく、支えることに徹するという生き方【野球バカとハサミは使いよう#7】

「分をわきまえる」は一見簡単そうで難しい 分をわきまえる。これは多くの人が適材適所で働く組織においては非常に重要なことだ。  プロ野球界では現阪神監督の和田豊の現役時代がそうだった。彼は分をわきまえることで大成した選手だったのだ。  プロ入り前の和田は日本大学で主将を務め、1984年のロス五輪日本代表として金メダルを獲得するなど、アマチュア球界のエリートだった。しかし、85年に内野手として阪神に入団すると、早くも挫折。なにしろ当時の阪神の内野陣は全盛期の掛布雅之、岡田彰布

全9ポジションをたった1試合で経験した男【野球バカとハサミは使いよう#5】

器用貧乏は言い換えればユーティリティープレーヤー 器用貧乏とは一般的に皮肉の意味で使われる言葉だ。なんでも器用にこなすものの、特に秀でた一芸はないため、あまり周囲から評価されない。どの会社にも一人はいるだろう。  プロ野球界にもいる。走・攻・守すべてにおいて一定レベルに達しており、さらに複数のポジションをこなせる器用さはあるものの、特に目立った長所がないため、なかなかレギュラーに定着できない選手のことだ。  しかし、球界はそういう器用貧乏な選手のことをユーティリティープレ

ビジネスマンである前にひとりの人間である【野球バカとハサミは使いよう#3】

自己投資を惜しんでは成長できない「給料の安さが営業不振の原因だ」――。そう嘆くのは、僕の友人である某社の営業担当者だ。より成績を上げるためには、さらなる人脈作りや多方面の勉強が必要になってくるのだが、そこに力を入れると金がかかってしまう。自己投資と生活困窮とのバランスに悩んでいるわけだ。  その点、1960~80年代の中日ドラゴンズで、長らく正捕手として活躍した木俣達彦は大胆な男であった。同時代に野村克也や田淵幸一といった有名捕手がいたため、一般知名度こそ2人に少々劣るもの