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【プロ野球】「野球バカとハサミは使いよう」山田隆道著

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“球春到来”に合わせ、2012~13年にかけて東スポ紙面連載された往年のプロ野球選手から処世術を学ぶコラムを復刻します。選手のエピソードから導かれる教訓は日々の生活に役立つこと間…
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#阪神タイガース

ノーヒットならピザだけ、猛打賞のときは…【野球バカとハサミは使いよう#31】

家庭内ニンジン作戦の効用を証明したポンセ 時は1980年代、現在の横浜DeNAベイスターズの前身である横浜大洋ホエールズは、決して強いわけではなかったが、実に個性的なチームだった。かの有名なスーパーカートリオ(高木豊、加藤博一、屋鋪要)がダイヤモンドを走り回り、オバQ・田代富雄が豪快なスイングで本塁打を量産。その他、名遊撃手・山下大輔の華麗な守備やエース・遠藤一彦の高速フォークなどにも魅了された。  そんな80年代大洋が誇る代表的な外国人大砲といえば、カルロス・ポンセだ。8

金田監督に顔面を蹴られたトレーバーに学ぶ〝ギャップ戦略〟【野球バカとハサミは使いよう#20】

仕事以外でも周囲の人の記憶を刺激しよう 長いプロ野球史の中には「記録より記憶に残る選手」という存在も少なくない。たとえば元阪神タイガースの外野手・亀山努もその一人であろう。  亀山はドラフト外入団という無名の存在ながら、プロ5年目の1992年にライトのレギュラーを獲得すると、シュアなバッティングとアグレッシブな走塁を武器に大活躍。中でも闘志あふれるヘッドスライディングは甲子園の名物となり、一躍スターダムに駆け上がった。  この年、それまで低迷していた阪神が2位に躍進したこ

早くトイレに行きたい!無欲で打ったら…ホームラン【野球バカとハサミは使いよう#14】

無心無欲が一番能力を発揮できる あらゆる仕事において、人間が最大の能力を発揮できるのはどんな局面か。日頃からの努力に加えて、体調や精神の管理も重要になってくるだろう。  その点について、1990年代にイチローらとともにオリックスで活躍した外国人選手、トロイ・ニールが見事な回答を示してくれた。ニールといえば、96年に本塁打王と打点王の2冠に輝いた左の長距離砲である。  彼が残した最大の伝説は、98年5月15日の対ダイエー戦だろう。試合前、オリックス・仰木彬監督はいつものよう

引退試合で送りバントした〝男の美学〟【野球バカとハサミは使いよう#10】

自分の役割に誇りを持ち、分をわきまえることがいかに美しいか 本来、プロ野球選手の引退セレモニーは一部のスター選手だけに許された特権であった。しかし、近年は微妙な選手にまで引退セレモニーを催すことが増えた気がする。  昨年、ヤクルトの石井弘寿やソフトバンクの柴原洋に引退セレモニーが用意されたときは驚いた(失礼)。おそらく興行として儲かるからだろうが、引退セレモニー安売り時代の到来を実感したものだ。  その点、1994年の阪神・平田勝男の引退は、地味ながらも胸に迫るものがあっ

元MLB本塁打王が川崎球場のトイレで悔し涙を流した【野球バカとハサミは使いよう#9】

ブライアントにビールを注ぐオグリビーの写真がエモい 野茂英雄が出現する前の日本球界にとって、メジャーリーグは雲の上の存在だった。だから、たまにバリバリの元メジャーリーガーが日本球団の助っ人として来日すると、彼らは日本の野球を見下した態度を見せることが多かった。  特に有名なのは1987年途中にヤクルトに入団したボブ・ホーナーだ。実力的には評判通りの怪物打者だったが、性格は極めてワガママで、当時の関根潤三監督を困らせたという。  そんな中、同年に近鉄に入団したベンジャミン・

〝偉い人〟に媚びるのではなく、支えることに徹するという生き方【野球バカとハサミは使いよう#7】

「分をわきまえる」は一見簡単そうで難しい 分をわきまえる。これは多くの人が適材適所で働く組織においては非常に重要なことだ。  プロ野球界では現阪神監督の和田豊の現役時代がそうだった。彼は分をわきまえることで大成した選手だったのだ。  プロ入り前の和田は日本大学で主将を務め、1984年のロス五輪日本代表として金メダルを獲得するなど、アマチュア球界のエリートだった。しかし、85年に内野手として阪神に入団すると、早くも挫折。なにしろ当時の阪神の内野陣は全盛期の掛布雅之、岡田彰布

オジサンだって明日うまくなるかもしれない【野球バカとハサミは使いよう#2】

〝鉄人〟衣笠祥雄の世界記録を支えた「少年力」 長年仕事をしていると、時として自分の限界を悟ってしまうことがある。僕もそうだ。著書の売り上げ不振で、気がめいった記憶は一度や二度ではなく、そのたびにカウンセリングの必要性を痛感したものだ。  それにもかかわらず、これまで一度も筆を折るまでには至らなかった。その最大の理由は、あの衣笠祥雄が残した言葉に支えられてきたからだ。  衣笠といえば、1970~80年代の広島カープ黄金時代をミスター赤ヘル・山本浩二とともにけん引した元祖・鉄

往年のプロ野球選手から処世術を学ぼう【野球バカとハサミは使いよう#1】

“球春到来”に合わせ、2012~13年にかけて東スポ紙面連載された往年のプロ野球選手から処世術を学ぶコラムを復刻します。選手のエピソードから導かれる教訓は日々の生活に役立つこと間違いなしです! たった1回でも〝伝説〟は存在感を高める 今季のプロ野球が開幕した。開幕戦の主役を飾ったのは、周囲の予想を良い意味で裏切る完投勝利を挙げた日本ハムの開幕投手・斎藤佑樹だ。大舞台でも物おじしないハートの強さこそが、彼のスター性なのだろう。  予想を裏切るという意味では、1988年の開幕