マガジンのカバー画像

【プロ野球】「野球バカとハサミは使いよう」山田隆道著

33
“球春到来”に合わせ、2012~13年にかけて東スポ紙面連載された往年のプロ野球選手から処世術を学ぶコラムを復刻します。選手のエピソードから導かれる教訓は日々の生活に役立つこと間…
運営しているクリエイター

#広島カープ

百回の弁解よりも一回の行動【野球バカとハサミは使いよう#29】

獲得した勲章は色あせない 人間はなにか勲章を手にするためだけに仕事をしているわけではない。しかし、だからといって勲章を手にできそうなチャンスがあるのに、それを逃すのもおかしな話である。  これはプロ野球では個人タイトルのことだろう。タイトルのために野球をやっているわけではないが、チャンスがあるなら狙いにいくのが人情だ。  かつて1980~90年代にかけて広島の二塁手として活躍した正田耕三が、その良い見本だった。正田は身長170センチという小兵だったためか、入団当初は決して

前進するためには〝後退〟も必要だ【野球バカとハサミは使いよう#24】

チョロQ方式で開花した田中幸雄 元日本ハムの田中幸雄といえば、1990年代のパ・リーグを代表する強打の遊撃手だ。07年に引退するまで、現役22年間で通算2012安打、287本塁打、1026打点を記録するなど、日本ハムの主砲として長く活躍した。  一方、遊撃守備は若いころは決してうまくはなく、初めてレギュラーを獲得したプロ2年目にはリーグワーストの年間25失策。強肩は魅力だったが、確実性には欠けていたのだ。  しかし、田中はそこから努力を重ね、3年目の88年にゴールデングラ

交渉事で精神的に優位に立つために…【野球バカとハサミは使いよう#22】

腕の筋肉を見せつけ相手投手を威嚇 仕事をしていると、様々な交渉事に挑まねばならない。その際、できるだけ交渉相手より精神的に優位に立ちたいと思うのは当然の心理だ。大きな商談になればなるほど、相手に足元を見られたら終わりである。  これはプロ野球における打者と投手の心理戦にも言えることだ。たとえば無名の新人打者が豊富な実績を誇るベテランの大投手と対峙すると、新人打者はバットを構えているだけで萎縮してしまうケースがある。大投手が発する威圧的なオーラにのみ込まれ、自分のスイングがで

「働く男」は、時に「できる男」を超える!【野球バカとハサミは使いよう#11】

元々右打ちなのに左打者になった野村謙二郎 出世を目指すサラリーマンの中には「自分はチャンスに恵まれない」と嘆く人も多いことだろう。チャンスをどう生かすかの前に、チャンス自体が訪れない。つまり、ふがいない現状を運のせいにしているわけだ。  そこで紹介したいのが、広島・野村謙二郎のエピソードである。ご存じ、現役時代は俊足巧打のトップバッターとして、通算2000本安打を達成した名選手であった。  そんな野村は小学生で野球を始めると、瞬く間に地元で評判の選手に成長。高校進学後は右

オジサンだって明日うまくなるかもしれない【野球バカとハサミは使いよう#2】

〝鉄人〟衣笠祥雄の世界記録を支えた「少年力」 長年仕事をしていると、時として自分の限界を悟ってしまうことがある。僕もそうだ。著書の売り上げ不振で、気がめいった記憶は一度や二度ではなく、そのたびにカウンセリングの必要性を痛感したものだ。  それにもかかわらず、これまで一度も筆を折るまでには至らなかった。その最大の理由は、あの衣笠祥雄が残した言葉に支えられてきたからだ。  衣笠といえば、1970~80年代の広島カープ黄金時代をミスター赤ヘル・山本浩二とともにけん引した元祖・鉄