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だから女性は長生き!?マダムたちの麻雀交遊録

 全国各地のマージャン教室は中高年女性たちでにぎわっている。時に真剣に、時におしゃべりしつつ卓を囲む彼女たちの生態はなかなか面白い。「雀聖アワー」の福山純生氏にその様子をリポートしてもらおう。

東1局

「アタシ、結構打てるから、初心者とは一緒に打ちたくないわ」

 いきなりやってきて、一瞬にして場を凍りつかせた和田ア〇子似の御婦人。御年68。

 とは言われても、ここはマダムたちが30人ほどいる〝初級教室〟。入門講座が終わったばかりで、ソーズの1を字牌の一種だと見まごう人たちにとっては、怪獣でも現れたのかと思ったに違いない。

 何を基準に結構打てるとおっしゃっているのかは分からないが、そんなに過信、否、自信があるのなら、わざわざ初級教室に来る必要はないはず。理由を尋ねると、曖昧な点数計算とマナーを身につけたいとのこと。ならば、断る理由はない。

 同卓した3人の初心者たちも、最初こそ強張った表情をしていたが、始まってしまえば、自分の手牌以外、周りは見えていない。ガンガンリーチしてくる怪獣に対し、オリるという概念が芽生えていない3人は、真っ直ぐに手牌を育て、次々とアガリをものにしていく。気がつけば怪獣が最下位で実戦対局は終了。

 卓に額をこすりつけんばかりに頭を垂れた怪獣。

「アタシ、とんでもないことを言ってしまったわ。ごめんなさいね」

 素直に非を認められる人は、受け入れられるのも早い。以来、毎週教室に通ってくる怪獣は、良好なコミュニケーションを築き、麻雀からプライベートに至るまで、お悩み相談役になっていった。このあたりの部分はやはり女性の方がうまい。打ち解けるのも、受け入れるのも、男性に比べて早いのだ。

東2局

「私は失望などしない。なぜなら、どんな失敗でも次への前進の新たな一歩となるからだ」

 アメリカの発明王、トーマス・エジソンの言葉である。こと麻雀においても、失敗のない人はいない。御年67。下町育ちのミツ江さん。大好きな役はリーチ。

 その日も元気よくリーチ宣言。でもよく見ると、イーシャンテン。左端に置かれている索子のシュンツが「一二四」になっている。親番オヤジが長考中、自らの誤リーチに気づき、愕然とした表情に変わったミツ江さん。

 通常であれば、リーチ者の心理は「ツモれ!」もしくは「出せ!」。誤リーチの場合はチョンボとなり、この会場では3000点オールを渡さなければならないルール。したがって「誰でもいいからアガれ!」といった心理状態か。無情にも長考オヤジ以外はベタオリ模様。しかし幸運にも、長考オヤジから追っかけリーチが入った。

 一転、歓喜の表情に変わったミツ江さん。だが、なかなかツモってくれない長考オヤジ。そうこうしているうちにハイテイ牌がミツ江さんの元に。正真正銘のラストチャンス。祈りを込めたツモ。静かに河に置かれた牌は八索。一瞬の静寂の後、長考オヤジから能天気な声。「ロ~ン、ハイテイ!」。リーチハイテイドラ1で7700点の放銃。見事にチョンボを回避した渾身の一打となったのだ。

 ミツ江さんは、明るい声でこういった。「おみごとね!」。頭を掻きながら照れ笑いを浮かべる長考オヤジ。だがそのセリフ、自身に言っていたことだとはミツ江さん本人と私しか知らない。この一打から不死鳥(フェニックス)のように蘇ったミツ江さんは、最終的にトップを奪取。エジソンの言葉を身を持って私に教えてくれた。多謝。

◆福山純生(ふくやま・よしき)1970年、北海道生まれ。雀聖アワー主宰。全日本健康麻将協議会理事。健康麻将全国会新聞編集長。好きな役はツモ。


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