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楽器好きにはたまらない!ローランド浜松研究所に潜入取材

取材は一期一会。東スポの記者になって以来、いろんな職種の方に話を聞いてきました。とび職の方にファッションチェックをお願いしたり、大学教授に愛の意味を教えてもらったり…。これまでも刺激に満ちあふれていましたが、楽器メーカーの研究所も想像以上のワンダフルワールドでした。ここでは紙面に書き切れなかったネタを公開します。(東スポnote編集長・森中航)

風光明媚な浜名湖をバックに電子ドラムが展示されている

浜松市やらまいか大使の渡辺広明氏といざ浜松へ

「実は想像しなかった売れ方でヒットしている製品がありまして…」

ローランドの広報、永井亮太さんのこのひと言を聞いた瞬間、私はこの取材をするべきだと直感しました。「想像通りに売れた商品」より「プロの想像を超えた売れ方」という現実のほうがきっと面白いに違いありません。
かれこれ7年くらい弊紙で連載している流通アナリストの渡辺広明さんに話を振って感触を尋ねてみると、「いいじゃん!一緒に浜松行こうよ」と即答。そういえば渡辺さんは地元が浜松で、「浜松市やらまいか大使」に任命されているほど〝浜松LOVE〟な御仁。今回の取材にぴったりです!

さて、浜松駅で新幹線を降り、渡辺さんの運転でローランド浜松研究所を目指します。私はこれまで浜松を通過したことしかなかったので、見るものすべてが新鮮です。人口約80万人の政令指定都市なので駅前は平日でもにぎわっていましたが、市街地を抜けると緑豊かな自然が広がっています。そして車を飛ばすこと30分、奥浜名と呼ばれる風光明媚な景色に思わず息を飲みました。こんなキレイなところで働きたい(笑)。

ローランド浜松研究所の前には絶景が広がっていました

我々を迎えてくださったのはローランド寺内岳さん、古谷卓二さん、永井さんの3人。「ローランド・ミュージアム」と呼ばれるスペースにあまたの製品が展示されていて圧倒されてしまいました。「たくさんご紹介するものがあるのでさっそく参りましょう」とお声がけいただき、館内スペシャルツアーがスタートです。

玄関でもめちゃくちゃ歓迎していただきました

家具メーカー「カリモク」とのコラボで生まれた電子ピアノ

ローランドの主力製品と言っても過言ではない電子ピアノ。重量や大きさを考えると生のピアノよりもコンパクトになっていますが、寺内さんは「それでもイマドキの部屋にもっとなじむデザインが必要だった」と言います。ローランドの最上位クラスの電子ピアノで採用された音源を搭載し、生活の中に溶け込むピアノとして魂を吹き込んだのが「KF-10 Kiyola」。愛知県の家具メーカー「カリモク」が天然無垢材をていねいに加工し、浜松市のローランドの工場で生産されている国産品です。

家具のようなデザインがお部屋にマッチ。椅子も特別な設計だ
背面には日本が誇る2社の名前が並ぶ

「2015年にグッドデザイン賞を受賞して、ニューヨークや東京などのMoMAデザインストアでも販売してもらっています。うれしいことにデザインを認めていただけました。たくさん売っていただいています!」(寺内さん)

Kiyolaの隣に並んでいたのが、見るからにバロックな雰囲気が漂う電子チェンバロ「C-30」です。一般的には18世紀以降はピアノの隆盛によって存在感が薄くなった楽器とされていますが、どうして電子楽器として開発しようと思ったのでしょうか?

譜面台の絵のインパクトがすごいし、脚のステンドグラス風パネルもすごい!

寺内さんが笑顔で語ります。「これも電子楽器専門メーカーの使命で、我々は楽器を演奏する上で生じてしまうさまざまな制約を取り払って音楽を楽しんでいただくことを大切にしています。チェンバロは非常に繊細な楽器でちょっと移動しただけで調律が必要になってしまいます。でもこれならメンテナンスや調律も不要で、本体とスタンドが分離できて持ち運びも簡単ですからね」

聞いてびっくりなのが電子楽器ならではの追加機能で、平均律だけでなく、ベルクマイスター音律、キルンベルガー、バロッティ、ミーントーンの5種類の調律法をボタン一つで変えられるのです。バッハが見たら腰を抜かすんでしょうね(笑)。

発売から40年以上!ロングセラーのコンパクトエフェクターは?

エレキギターを弾く人なら誰もが目にしたことがあるBOSSのコンパクトエフェクター。古谷さんは「1977年から現在までに発売した機種数は132モデル。累計で1700万台以上を販売しています!」と言います。魅力は音色の豊富さのみならず堅牢であること。「100万回踏んでも壊れないように設計していますからね!」(古谷さん)

せっかくなので自らもギタリストで、長年BOSS製品の営業を担当された古谷さんにロングセラーを紹介してもらいましょう。

MT-2 Metal Zone

極悪な歪みを生み出すペダルがこんなに売れてるなんて超意外(※個人の感想です)。古谷さんいわく「特に海外で人気が高い」んだそう。1991年に発売されたMetal Zoneは、ハイゲイン・ディストーション・ペダルの象徴として累計で100万台以上のセールスを記録。伸びやかなサステインと太くタイトな歪みにより、ヘビーなバッキングから存在感のあるリードまで、ディストーション・サウンドを楽しめます。

TU-2 Chromatic Tuner

エフェクターではありませんが、ギターにもベースにも不可欠なチューナー。エフェクターボードの中でよく見る白いやつです。ペダルタイプのチューナーは今となっては一般的ですが、世界初のペダル式チューナーだそうです。特に旧機種のTU-2がよく売れたそうです。

SD-1 SUPER Over Drive

定番のオーバードライブ。「これは単体の歪みとしてだけでなく、他の歪みエフェクトやアンプと組み合わせもOK。幅広く使えるのがポイント」と古谷さんが猛プッシュしてました。

海外で大ヒット!漢字ネーミングの秘密とは?

エフェクターブランドとして確固たる地位を築いているBOSSですが、2016年から新しいギターアンプ「KATANAシリーズ」を発売し、これまた高い評価を受けています。どうして日本語の「」という文字にこだわったのか古谷さんが解説してくれました。

「ギターアンプの名称は、英語だったり、アルファベットと数字の組み合わせでつけられるのが一般的です。我々の製品名に漢字のシンボルを使うのはどうなのかって社内でも結構な議論になりました!それでも弊社の売上は約90%が海外で、特に北米と欧州が大きな市場になっているんです。海外の市場で日本のメーカーであることを理解していただきたいですし、名誉、精巧さ、そして高い芸術性のシンボルである日本刀と、このアンプから出てくるサウンドのイメージはぴったり!そういうわけで"KATANA"の名を冠しました」

巨大だったテープエコーもデジタルの技術力で超コンパクトに

カラオケに行けば当たり前の一機能となっているエコーも昔は大がかりな装置が必要でした。この「RE-201」は磁気テープを使った「テープエコー」の定番だそうで、ギターのみならず様々な用途に用いられたそうです。

40年以上前のビンテージ品が、アナログを求める人に今なお重宝されている

「空間系エフェクトの先駆けになった製品です。今はデジタルで同等の処理ができるようになりましたが、アナログエコーならではの音を好む人もいて、40年以上前の製品なんですが状態が良いものは中古市場ですごく高値で取り引きされているんです」(寺内さん)

水色のCE-2がBOSSの定番コーラスエフェクター

大ヒット商品「WAZA-AIR」の魅力をどう伝えるか問題

紙面にも書きましたが、コロナ禍でいわゆる巣ごもり需要によって、家で楽器演奏を楽しむ人が増えました。その中で特にヒットしたのがヘッドホン型ギターアンプの「WAZA-AIR」です。私も体験させていただいたのですが、立体音響テクノロジーとジャイロ・センサーによって、ステージに立っているかのような臨場感がとにかくすごい。

画期的な商品なのですが、古谷さんは宣伝方法に頭を悩ませたと言います。

「体験してもらったら『何これ!?すごい』ってびっくりしてもらえるだろうけど、ヘッドホン型のアンプだから弾いている本人しかその音が聞こえないじゃないですか(笑)。そういう製品を作ったから当たり前なんですけど、このギターアンプの魅力をどうやって伝えていけばいいのかって悩みましたよね。いろいろ考えた結果、アーティストさんに事前に何も伝えずに触ってもらって、音を聞いてびっくりした様子を動画にしてみました」

こちらがそのユーチューブ。個人的には「くるり」の岸田繁さんが「うわぁ、なにこれ?え?」と目を丸くしているところが面白いです。

取材を終えて…「好き」があふれる会社でした

左から永井亮太さん、寺内岳さん、古谷卓二さん。お世話になりました!

怒涛の取材を終えて、最後に3人が「どうしてローランドに入社したのか?」を質問してみました。

寺内さん「中学からバンドやってましたね。ドラムです。音楽にかかわる仕事がしたいと思って、営業マンとして入社したんです」

古谷さん「私は寺内と同期でギターをやってました。どうせ仕事するなら楽器がいいなと思って入社しました。当時は今みたいに社員数も多くなかったからいろんな仕事をしましたよ(笑)」

永井さん「私は自分が演奏するよりは音楽を聴くほうが好きで、リクナビやマイナビを見て就活をした世代です。何社か内定をもらったんですが、最後はやっぱり音楽に携わる仕事をしたいなって」

みなさん目を輝かせて楽しそうに話されている姿が印象的でした。

※ローランド浜松研究所は一般の見学受付を行っておりません。オンラインフェス「Roland/BOSS Players Summit 2022」特設サイト内に「ローランド・ミュージアム」をバーチャルで再現した「3D MAIN BOOTH」がオープンしていますので、下記リンクから遊びに行ってください。


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