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ホストの動画を見始めたら、ホス狂いの動画も見ることになって…

自分ではインターネットで検索したことがないのに、やたらと「おすすめ」に挙がってくるな…と思ったことはありませんか? 記者の仕事柄、あらゆるジャンルの調べものをすることが多いのは確かですが、なぜか私のYouTubeやTikTokはホストの動画を「あなたへのおすすめ」として猛プッシュしてきます。どんなアルゴリズムやねん?と不思議に思ったのでとりあえずポチっとして見てみました。するとホスト同士のやり取りや歌舞伎町で起こる〝事件〟がなんか面白い。その結果、ますますホストの動画だらけになりました(苦笑)。

一番驚いたのはホストに行く女性が自らを「ホス狂い」と称して動画コンテンツを世に送り出して支持を集めていたところです。もう世の中全部コンテンツなのかもしれません。

本屋さんもワンダーランドです!

今回読んでみたのは、宇都宮直子氏の『ホス狂い 歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る』(小学館新書)です。ホストにハマる女性たちを追ったルポで、宇都宮さんはこの本を書くために歌舞伎町のアパホテルと例のマンションに居住したというから頭が下がります。こんな章立てです。

第一章 歌舞伎町ホスト視察未遂事件
第二章 「人妻ホス狂い」 いちごチェリーさん
第三章 「〝ホス狂い〟ユーチューバー」 あおいちゃん
第四章 「好きな人がたまたまホストだっただけ」 ねねさん
第五章 「歌舞伎町の女王」 エミカさん

のっけからヘビーな感じしますよね…。本書の中だけでなく、リアルな歌舞伎町の中でもホストクラブが軒を連ねる一帯には独特の空気が流れています。

 道を行く人々もまた独特の雰囲気をまとっている。ブランドもののロゴが目立つTシャツや帽子を身に着けた、カトンボのように細い男の子たち。ツインテールにMCMのロゴの入った、ピンクのリュック。少女が着るような、ビスクドール風のワンピースに厚底靴。取材当時のはやりだったのか、「ドン・キホーテ」のマスコットキャラクター・ドンペンくんがプリントされたTシャツを着た女のコなど、いずれも、歌舞伎町の外ではほとんど見かけることがないのに、町内に足を踏み入れたとたん、まるで制服のように同じような服装で固めた年若い男女で溢れる。
 歌舞伎町の周囲だけ、結界が張られているみたいだ。

宇都宮直子『ホス狂い 歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る』(小学館、2022年、62ページ)

ホストたちのYouTubeを見てもわかるのが、今の人気ホストたちは男らしさよりも美しさ重視にシフトしている点です。「俺か俺以外か」の名言で知られ、メディア露出の多いローランドこそ異次元の個性を放っていますが、売れっ子ホストたちもギラギラ感よりもさわやかさが前面に出ています。多分、歌舞伎町以外で出会ったらホストと気づくこともない。これも時代の流れなのでしょう。

なぜ女性たちがホストにハマるのかという疑問をお持ちの方はぜひ本書をじっくりご覧ください。エンタメとしてホストにハマる気持ちはわからなくもないですが、身を壊すほどの大金を払ってまで愛を求める行為は、どうしても男の私には理解しきれないもののように感じます。

個人的に一番興味を持ったのが、著者がシャンパンタワー職人に取材している箇所でした。原価はたったの2万7500円だそうですが…。

シャンパングラスを積み立てて作り上げた「シャンパンタワー」は、見た目には、華奢で繊細、儚げに見えるが、その組み立て作業は、とんでもない重労働という。
「みなさん『シャンパンタワー』というと、グラスを積み上げて終わりと思われるかもしれません。でも、シャンパンタワーを設営するということは、タワーだけでなく、タワーをキレイに見せるための土台や照明はもちろん、天井や壁も飾り立てる。いわば、空間全体の演出で、そこは内装工事に通じるところがあります。そのため、ライトはもちろんのこと、タワーを映えさせるガラスの土台や天井を飾るための幕、ホストさんの写真が貼られたパネルなんかを運ぶことがメインとなる『肉体労働』なんですよ」(櫨山さん)

宇都宮直子『ホス狂い 歌舞伎町ネバーランドで女たちは今日も踊る』(小学館、2022年、193ページ)

ちょっと前にレアなお仕事本について書きましたが、そこに〝シャンパンタワー職人〟を追加したくなりました。(東スポnote編集長・森中航)

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