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もしも宇宙人を取材することになったなら

東スポにも4~5年ぶり(?)に新入社員がやってきました。まだ全員と接したことがないのでどんなポテンシャルを秘めているのか謎ですが、小心者の私は先輩記者として恥ずかしくない存在でありたいな~と思い、本屋に出向きました。そうです、人生困ったときは本屋に行けばなんとかなる説です。(東スポnote編集長・森中航)

今回私が書店で購入したのが『宇宙人と出会う前に読む本』です。あらかじめ言っておきますが、一回り以上年の離れている新入社員を宇宙人だと思っているわけではありません。新入社員は弊社の「光」ですからね、宇宙人だなんてレッテルを貼ったら偉い人に叱られます(笑)。

ではなぜこの本を選んだのか? タイトルだけ見るとオカルトっぽく見えるかもしれませんが、この本は泣く子も黙るブルーバックスなのです。ご存じない方のために説明すると、ブルーバックスとは講談社が1963年に創刊した老舗の科学技術系の新書シリーズ。一流の科学者たちが一般人向けにわかりやすく書いてくれているものの、小さい頃から理系科目が苦手な私にとってはちょっとハードルが高いのも事実です。それでも「全宇宙で共通の教養を身につけよう」というサブタイトルに惹かれて購入に至ったというわけです。もしも私が全宇宙で共通の教養を手にしたら全宇宙で取材ができるスーパー新聞記者になれるかもしれません。

宇宙人と会話するためにまず知るべきこと

毎度おなじみ、本を楽しく紹介します

ワクワクしながらページをめくると、プロローグからぶっ飛んでます。

どこまでも続く暗黒の宇宙空間に、そこだけが明るく輝いている、人工的な建造物が浮かんでいます。その巨大さたるや、あの国際宇宙ステーション(ISS)さえ比較にならず、もはや一つの「都市」とでもいえそうなほどです。いま、あなたはこの「惑星際宇宙ステーション」に、地球人メンバーの一人として足を踏み入れたところです。(3ページ)

読者を架空のシチュエーションに引き込むなんて、SF小説みたいで面白そうです。しかも「あなたは…」という二人称視点で書かれているので没入感もあります。実際に宇宙人と会話するシーンなんてちょっと楽しそう。(※1)

ファーストインプレッションとなる宇宙人に最初に聞かれるのは「あなたはどこから来たのですか?」。まぁ初対面ならあるあるの質問ですよね。インタビュー取材でもたまにあるやつです。
「君はどこの出身なんだ?」「私は茨城県の水戸で育ちました」みたいなやりとり。でも、宇宙人に「茨城県」や「日本」は通じないでしょうから、この場面、私だったら「自分、太陽系の地球っていう青い惑星の出身なんすよ」と答えるでしょう。しかし…。

もしこんな答え方をしたら、相手に対してきわめて不適切であるところか、社交の場においてはマナー違反とさえいえることは、ぜひ知っておいてほしいところです。(中略)「地球という惑星から来ました!」という答えは、海外で初対面の相手にどこから来たのかを聞かれて、いきなり「○○県から来ました!」と答えるようなものなのです。恥ずかしいですよね。

高水裕一『宇宙人と出会う前に読む本 全宇宙で共通の教養を身につけよう』(講談社ブルーバックス、2021年、16ページ)

…はい、すみません。本書の中で出会う宇宙人は、天の川銀河の住人であり、かつお互いの「太陽」(=恒星)」が肉眼で見える範囲(=約2000光年)に住んでいることを前提にしているそうです。ところが、天の川銀河の直径が約10万光年もあり、その中に約1000億個の恒星があるので、私たちの太陽の位置を伝えるだけでも(多分1000億個分の1だから宝くじ以上に)一苦労というわけです。無理ゲー感が漂い始めていますが、著者がドラえもんばりに「立体星座カタログ~」という〝秘密道具〟を教えてくれたので、何とか前に進めます。まだ読める、読めるぞ! ここではとりあえず「太陽は銀河の中心から2.6万光年離れていて、太陽から一番近い星はケンタウルス座α星で太陽から約4.2光年、次に近いのは約8.6光年離れたシリウス」を丸暗記しとけば何とかなるっぽいです。

ブルーバックスに挟まれている栞もレベルが高くて、ちょっと何言ってるのかわからない!

太陽はG型なんですって

次に必須の教養は太陽の色だそうです。なぜならすべての恒星は色によって7つの種類に大別することができるからです。説明すると長いので、一気にまとめますよ。

青…OB型、寿命1000~1億、重量型
青白…A型、4億~12億、標準型、シリウスやベガ
クリーム…F型、30億、中量型
黄(緑)色…G型、100~150億、軽量型、太陽
オレンジ…K型、200~1000億、低温型
赤…M型、1000億~10兆、巨大型ぶよぶよ
褐色…LYT型、10兆~ほぼ死なない、未熟型
※上から順に明るく、星は明るいほど早く燃え尽きる

なんかもう初めて聞くことばかりで頭がショート寸前なのですが、OB型やA型では生命が生まれたとしても多細胞生物にまで進化するには時間が全然足らず、知的生命の出現は無理(Fは出現したとしてもすぐ終わる)。逆に暗いタイプのLYT型もエネルギー不足で無理。なので、宇宙人が存在しうるのはG型、K型、M型のせいぜい3種だそうです。(※2)

だから、地球人の常識として「太陽はG型で、そのG型太陽を公転する惑星のうち、内から3番目にある地球からやってきました」と覚えておかねばなりません。

まさか元素周期表が役に立つ日がくるなんて!

既にだいぶ長くなっていますが、宇宙人から問いかけられる2つ目の大きな質問が第2章の「あなたは何でできていますか?」。これも容易には答えられません…。

「私の60%は水分でできていまして、え~っと、残りは多分バファリンです、バファリンの半分は優しさでできています」

はい、ボケも当然伝わりません。無理に笑いを取りにいかなくても、元素を伝えることができれば宇宙人とコミュニケーションが取れるかもしれないというのです。

すべての元素は宇宙で生成され、それらが集まったり組み合わせを変えたりすることで、見た目はまったく異なるすべてのものが形成されるのです。元素が生成される過程にさかのぼると、いまは宇宙のはるか遠くに離れている宇宙人の身体も、その惑星も、私たちの身体と変わらなくなってしまうということです。

前掲書、45ページ
文科省「一家に1枚元素周期表(第12版)」から引用(https://www.mext.go.jp/stw/series.html

へぇ~が止まりません。まさか私たちが高校の化学の授業で習った「周期表」がこんなところ役に立つとは…。

文明をもった宇宙人が化学をきわめていけば、必ずこの周期表にいきつくと考えられます。もちろん名前や、発見されている元素の数は違っても、その元素が何をさしているかは同じであり、並べ方もこうなっているはずです。周期表こそは宇宙人共通の「教養」ともいえるのです。

前掲書、51ページ

それ早く言ってよ~、そう思わずにはいられませんでした。で、話を戻すと、われわれ地球人の身体は元素で答えるならば酸素(O)、炭素(C)、水素(H)、窒素(N)の4つを答えられれば宇宙人にも伝わるだろうというのです(=ちなみに上に添付した、文科省が作った周期表にも人体の元素の存在比として、Oが65%、Cが18%、Hが10%、Nが3%ときちんと記されてました!)。

宇宙記者はきっとロマンチックな仕事だ

わかったようでよくわからない部分もありますが、とにかくこの本はロマンチックに溢れています(笑い)。
宇宙のはじまりといわれるビッグバンからおよそ20分後に、最初の元素である水素とヘリウムがビッグバン合成によりできたそうです。その直後の水素やヘリウムは電荷を持っているため光と強く結合していますが、ビッグバンから3000年がたったころ、まずヘリウムが光と分離、38万年後には水素と分離して、光が宇宙空間にいっせいに放たれたそうです。これを「宇宙の晴れ上がり」と言うんだとか。

私はもう38万年も待っていられませんが、弊社の「光」がいっせいに放たれる日が待ち遠しい限りです。

※1 化学に対して真面目な人のために著者はきちんと〝おことわり〟も入れています→「多種多様な惑星の人々が一堂に会するような状況を作ることは、まず不可能と考えられます。宇宙はあまりにも広大で「光年」で表される星と星との間の距離は、光の速さでも何年も何十年もかかるほど隔たっています」)
※2 「太陽」が複数あるときは異なるそうです




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