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DV夫の自己分析と谷村有美

企画趣旨

「おたくの新聞って変わってますよね」「変わった記者さんが多いんでしょうね」「読む本も変わってるんでしょうねぇ」――軽い嘲笑とともにこんなふうにイジられることが多いのが東スポの記者。いやいや、とはいえ新聞記者ですからね。しっかり情報収集してるんですよ!ってことで始めたこの読書ログですが、1回目に指名した赤メガネ記者が、娘のラノベを読んだ上で自らの新聞を題材に勝手に落語を書きはじめてしまいました。2回目は企画の言い出しっぺである森中記者がTikTokで話題の恋愛小説を読んで軌道修正…できていたと信じて、3回目、いってみましょう。担当者は45歳・猫背記者です。

ニュースで本を選ぶ

 他紙とは違う視点でニュースを料理する東スポの記者はどんな本からネタを拾っているのか?と書けばカッコ良く聞こえますが、普段から「ニュースに生かそう」と思って本を読んでいるわけじゃないんですよね。単にいろいろなものを読むのが好きな雑食系の本好きなだけで、なんなら、ニュースを目にしたことで興味を持ち、関連する本を読み始めるという逆パターンもあります

 例えば、2月の上旬に飛び込んできた、「日本マクドナルド」の元社長である原田泳幸氏が、妻でシンガーソングライターの谷村有美に暴力を振るい、逮捕されたニュース。通報したのは谷村で、その後、原田氏は略式起訴されました。原田氏は、米アップルコンピュータで副社長まで上り詰め、その後、低迷していた日本マクドナルドを復活させましたが、今回の事件により、メディアは「あのカリスマ経営者がまさかのDV転落」「晩節を汚した」といった切り口で、〝裏の顔〟に注目。本紙もすぐにこんなニュースを配信しています。

 他のニュースを読んでも、「コストカッター」「ワンマン」といった表現が目につきました。では、実際はどんな人なんでしょう。経済関連の取材もしている記者としては非常に気になるので、著書を読んでみました。ニュースをきっかけにビジネス書を読むこともあるわけです――。

カリスマの実像が気になる理由

 と、このブログも綺麗に着地する予定だったのですが、正直に申し上げます。「経済記者だから」というのは言い訳です。実は私、高校時代、谷村有美のファンだったのでございます。男子校の野球部で、オンナのオの字もない毎日を送っていた男が、女性の心情を見事に歌い上げるクリスタルボイスにときめいていたなんて恥ずかしくて口にできず、大学入学以降は誰にも話していませんでしたが、はい、大ファンでした。CD、全部持ってました。声も歌詞も、なんなら見た目も大好きでした。そんな女性に手を上げた男性はいったいどんな人物なのか…気になってしまったんですね。はい、我ながら気持ち悪いです。で、手に取ったのがコレ。

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 2012年の秋に発売されていますから、既にマクドナルドの業績をV字回復させた後。最高益を更新する絶好調時代だったので、「企業経営論」「リーダー論」を自信満々で語っています。今回のニュースで報じられた「ワンマン」な部分も垣間見えますが、それは「強烈なリーダーシップ」ともとれますし、実際当時はそうとらえられたことでしょう。ただ、これまた今回取りざたされているシビアで冷徹な一面に関しては、ちょっとイメージが違いました。コストカッターと表現されるような機械的な人なのかと思いきや、「データよりもメッセージ性を重視しろ」なんて言葉も出てきます。

新たな顧客を広げるための金脈を掘るには、表面的な対応ではダメです。現場のやる気をうんと引き出すには、こちらの情熱が大切なのです。(中略)理屈やサイエンスではありません。現場のやる気が最大の武器です。

 本の冒頭にはこんな一文も。

「人間にとって一番必要な力とは何なのだろう」と考えてみると、それはやはり「人間力」だと思います。人間力とは、まず人から愛されること、信頼されること、そして人と人との協調性を大切にすること、物質的な価値観ではなく、精神的な価値観をきちんと持っていることだと思うのです。

 それほどロボット的なイメージではないですよね。ハートだったり、人の内面だったりを重視しているように映ります。まあ、この手のビジネス書は、自分に都合の悪いことは書きませんし、経営者のPRという側面もありますから鵜呑みにはできませんが、血の通った理屈だとは感じました。ただ、こういった教えを部下に優しく説けるかどうかは、別の話のようです。本人が自分について、こんなふうに綴っています。

私が人からよく言われるのは、人の話を聞かないということです。そして、優しくないと言われます。自分の考えを通す、簡単に褒めないからだと思います。反論はありますが、それは私の信条ですね。

 このスタンスが、良くも悪くも今回噴出したようなイメージにつながっている気がするのは私だけでしょうか。そして、谷村有美ファンとしては、もしかして家庭でもこの信条だったんじゃ、奥様へはどうだったのか、ちょっぴり気になるところですが、夫婦のことは夫婦にしか分かりません。谷村有美もブログで、原田氏から謝罪があったことを明かし「今しばらく家族をお見守りいただきますことをお願い申し上げます」と綴っているので、私もこれ以上の詮索はやめにして、倉庫の中から昔のCDを詰め込んだ段ボール箱を引っ張り出してみました。確か、残しておいたような…。

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ニュースからの再会

 ちょっぴり残念なニュースでしたが、おかげで少しだけ青春時代を思い出せました。27年ぶりに聴いてみると、童貞の坊主頭の野球バカがこんな女性の本音的な歌詞にハマッていたことが改めて気持ち悪くて仕方ありません。でも、やっぱりいいなあ、谷村有美。今回の報道をきっかけにユーチューブとかで谷村有美を探した同志の皆さんも多いと思います。やっぱりいいですよね、谷村有美。

 そうそう、前出のブログの1つ前、事件直後のブログで谷村有美はこう言っていました。「ゆっくり前向きに。心と身体を休めて、また満面の笑顔で、お逢いできます日を楽しみに」。なるほど、歌ってましたね。アルバム「Docile」の3曲目

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退屈な午後は心の栄養」――どうぞゆっくり休んで、また元気な姿を見せてください。

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