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焼肉をおいしく食べるために我慢の利く男にならねば…

暑い夏こそ焼肉でスタミナをつけたいですよね!本日ご紹介するのは扶桑社から刊行された『教養としての焼肉大全』という分厚い一冊です。思わず塊肉なんじゃないかと思うほどのボリュームですが、焼肉の奥深さを考えさせれました。

「大全」と名乗っているだけあってとても壮大な構成です。目次をのぞいてみましょう。

第1章 日本における焼肉と肉食の歴史
第2章 焼肉に潜むリスクと正しい付き合い方
第3章 焼肉の焼き方を知れば、肉が格段に旨くなる
第4章 「いい」焼肉店とメニューの選び方
第5章 仕事と人生に役立つ焼き肉店におけるコミュニケーションの組み立て方
巻末付録 主要焼肉店年表

グルメ本の世界も奥が深いですね

まずは火力の重要性を心得るべし

私はハラミが大好きなので、手っ取り早くハラミの上手な焼き方を知りたくなったのですが、著者の松浦達也さんはかなり手厳しいことをおっしゃいます。

 そもそも日本人は肉を焼くのが苦手だ。先述のとおり、肉食の歴史が160年程度で、しかも家庭や一般の人が肉を焼くようになったのは第二次世界大戦後のことだった。実は大正時代から昭和初期にかけて(関東大震災から第二次世界大戦の前)のわずかな間、都市部では一般層に広まりそうなほど一時的に日本の洋食シーンが盛り上がった瞬間があったのだが、わずかな蓄積も戦争で元の木阿弥に。しかも正しい調理法を失ってしまった。

松浦達也『教養としての焼肉大全』(扶桑社、2022年、124ページ)

現在では家庭用ホットプレートが1200~1400ワットくらいの製品が主流ですが、70年代後半ごろだと1050ワットしかなく、そもそも肉を焼くには火力不足だったそうです。

なぜ火力が大切なのでしょうか? 210℃~250℃あたりの温度だと肉にメイラード反応が起きやすくなるからだと松浦さんは言います。焼肉のみならずトーストやせんべいの焼き色、コーヒーの色なんかも食材に含まれるアミノ酸やたんぱく質が加熱によって糖と結びついた化学反応で、このメイラード反応が起こると褐色物質のメラノイジンや香味成分が生成されるそうです。あの香ばしい匂いが食欲を爆発させるんですよね、わかります!

付録の温度マップ。中央が強火だとは限らない

火力が重要なのですから、焼き始めるまで5分待つこと肉は火力の強いところに置くこと、肉は置いてあった場所ではなくその隣にちょうつがいのようにひっくり返すことがまず覚えるべき3点だそうです。

肉の特徴のプラスを伸ばし、マイナスをカバーする焼き方を心得よ

不動の一番打者「タン」はUSか和牛なのか、薄切りなのか厚切りなのかで焼きを変えるのが通だそうです。素人にとって難しいのが厚切りのお肉なんですよね。どうしたらいいんでしょう?

 味もコクも深い厚切りタン。たいていの店では一般の人にも焼きやすいよう、片面に切り目が入っている。中火で切り目の入った側から焼き始め、切り目の奥の断面の色が変わったら裏返す。両面に焼き目をつけたら、皿にとって2~4分休ませる。表面がテラっと濡れたような表情になったら網の上に戻して、乾燥した表面が泡でジュクジュクいったら、裏返して再び皿で休ませる。
 以上を繰り返して、内側からはね返すような強い弾力が感じられたら完成。

松浦達也『教養としての焼肉大全』(扶桑社、2022年、148ページ)

肉汁を閉じ込めるために「お肉を休ませる」というのはステーキだけじゃなかったんですね。私はこれまで焼き目がついた瞬間に今だっと頬張っていましたが、食べるタイミングが早すぎたとは…。

タン

私の中では最高の部位「ハラミ」はどう焼くのが正解なのでしょうか?

5mmくらいのカットなら強火で両面に焼き目をつけたら皿にとって1分休ませ、強火ゾーンでもう一度両面を香ばしく焼きつけて完成。
1cm以上の圧なら両面に強い焼き目をつけ、強火ゾーンで1分ほど返しながら温めた後、皿に取って2分休ませる。その後、中火で両面をバリッと焼き上げ、内側から強い弾力が出てきたら完成。
2cm以上の特厚の場合は、2回目以降の焼きと休ませを弾力が出るまで繰り返す。

松浦達也『教養としての焼肉大全』(扶桑社、2022年、150ページ)
ハラミ

そんなに待たないといけなかったなんて…(苦笑)。40年近く生きてきたのに焼肉を理解していなかった自分が恥ずかしい。これからもうちょっと我慢の利く男にならねばなりません。(東スポnote編集長・森中航)

ハツモト


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