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せっかちジジイのダブリー一発ツモはまさかの役満逃し!?

 地域貢献や健康につながる麻雀は、ゲームならではのハプニングや人間模様も見どころのひとつ。各地のマージャン教室や大会に参加している「雀聖アワー」の福山純生氏が、ジジババの生態をリポートします。

東1局

「ダブルリーチ」――ポン・チー・カンのない第1巡のうちにリーチをかけたときに成立する役。親でも子でも成立する役だが、親なら天和テンホー、子なら地和チーホーという役満のテンパイとも言える。

 御年72。世界を巡る豪華客船で料理人をやっていた太助さん。束の間の休憩時間には、麻雀で気分転換をしていた海の男である。

 現天皇陛下も皇太子時代、クイーン・エリザベス号に乗ってアメリカからイギリスに行かれる船中で、麻雀を楽しまれた逸話があることを考えれば、船旅と麻雀は切っても切れない関係かもしれない。

 東1局。親番は自他ともに認めるせっかちな太助さん。慌ただしく第1打で一索を切りながらリーチ宣言。「今日はついてるな」とご満悦。親のダブルリーチに周りは困惑。おっかなびっくり打牌する南家のご婦人。「アタッたら交通事故だ」と、ぼやき始める西家と相槌を打つ北家のジジイたち。そして太助さんのツモ番。

「ツモ。一発!」

 得意げにツモった牌は四索。役はダブルリーチ一発ツモピンフで4000オール。点数を渡しながら、ご婦人がおずおずと尋ねた。

「あんた、一索を切らなかったら天和じゃない…

 途端に真っ赤な顔になった太助さん。バツの悪そうに「お、おう。いやほら。いきなり役満なんて言ったらさ…皆やる気なくなっちまうだろ…」。単に気づいていなかったことを隠そうとする自己弁護。だが見方を変えれば、一発でツモり直すとは、どんだけ牌に愛されてるんだとも言える。

 ただその後、第1打をあまり考えもせずに切ることをやめた太助さん。「脱皮できない蛇は滅びる」とは、哲学者ニーチェの言葉。人間はいくつになっても常に新しくなっていく。

東2局

「麻雀で地域貢献しませんか?」――以前、某週刊誌に地域指導員養成講座の募集記事を掲載したところ、大きな反響があった。麻雀はコミュニケーションツールとしても優れているので、定年後や子育てが一段落した後の仲間作りにはもってこいなのである。

 特筆すべきは、古希を迎えた亀治郎さん。世界中を飛び回ってきた元商社マンである。出張でよく行っていたロサンゼルスには雀荘があったそうで、宿を予約しておいても、朝まで麻雀だから泊まったことが皆無だという。日本にいるときもその生活スタイルを貫き、雀荘からそのまま仕事に行っていたそうで「ワシは寝たきり老人にはならんが、出たきり老人にはなる」と豪語し、年上女房には迷惑をかけ続けてきたと笑う。

 しかし年々仲間が病気になったり、逝去されたりで、卓を囲む機会が減ってきていた折、記事を読んで応募してきた。たぐい稀な麻雀愛が効力を発揮し、地元福岡県で行政と連携。麻雀コミュニティーサークルを作り、毎日50人ほどが集まる大所帯になった。

「麻雀は話をしながらできるのがいいんですな。とくにひとり暮らしの高齢者にとっては、声を出すことはホント大事。麻雀とカラオケさえやっていれば100歳まで生きられるね」

 100歳に到達できるかどうかはさておき、何よりも変わったのは奥さんの態度だという。「以前は『また麻雀?』と言われていたけれど、地域貢献につながっている今では『いってらっしゃい!』だもんな」。

 健康法は多種多様だが、誰かの役に立っているという自覚こそ、長寿の秘訣なのかもしれない。

◆福山純生(ふくやま・よしき)1970年、北海道生まれ。雀聖アワー主宰。全日本健康麻将協議会理事。健康麻将全国会新聞編集長。好きな役はツモ。


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