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伝説の麻雀コラム復刻!ジジババの仰天エピソードは役満級の面白さ!?

 高齢雀士たちのぶっ飛びエピソードから長寿の秘訣を学んじゃおう…という前代未聞のコーナーとしてスタート。あまりの人気から「長寿の秘訣になんてどうでもいいから、もっとたくさんエピソードを書いてくれ!」というハガキが殺到し、異例の長期連載となったコラムをnoteで復刻します。執筆するのは、各地のマージャン教室や大会に積極的に参加し、ジジババたちの元気すぎる生態を目の当たりにしている「雀聖アワー」福山純生氏です。

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東1局

 麻雀教室に通う生徒の平均年齢は60代後半。参加者の8割以上は女性である。そのほとんどは初心者。始めた動機の多くは、ボケ防止。確かに麻雀は脳の活性化にいい気はする。科学的にはわからんが。

 教室でよくあるのは、ポン・チー後のリーチ。「テンパイしたらとにかくリーチしろ!」。旦那の遺言だったのかもしれない。

 とある日。のどかな光景に出くわした。バアさん4人が打っている卓を観戦していると、御年82歳のバアさんがリーチをかけた。同卓者たちは「リーチだって。怖いわねぇ」。そう口にしながらも、危険牌を平気で切ったりしている。自分がアガることしか考えられないので、相手にアタりそう…なんて意識はない。そんな中、とあるバアさんがドラを切った。「それポン!」。発声したのはリーチ中のバアさん

 リーチ後にポン? マージャン教室では用語を間違えることはよくある。きっとロンとポンを間違えたのだろう…そう思いきや、バアさんは躊躇なくドラをポンして、自分の手牌から1枚切り出した。同卓者全員が驚愕の表情。さすがにリーチ後にポンはできないと気がついてくれたのかと胸を撫でおろしたのだが、驚きの意味が違った。

「ドラをポンだって。ますます怖いわ」

「私もまさかドラをポンできるとは思ってなくて。今日はツイてるかも!」

 知らないことは、ときに幸せである。役や点数計算なんてわからなくても、楽しめればなんの問題もないのである。ちなみにリーチ者の手をよく見るとポンしてイーシャンテンだった。

東2局

 麻雀はアガったらうれしいが、フリ込んだら悔しい。人間だもの、当然である。ただ、感情の表し方は千差万別。意に介さず次局に向かえる人もいれば、いつまでも引きずって勝手に崩れる人もいる。

 御年79。いつも真紅のジャケットを愛用しているバアさん。その感情の表し方はすごかった。

 南3局。僅差の戦い。ドラは發。河には1枚も見えていない13巡目。真紅のバアさんはおもむろにその發を切った。私の上家に座っていたオッサンから「ロン」の声。続いて「8000」と点数申告。だが、バアさんは微動だにしない。

 オッサンは繰り返した。「8000」。バァさんはまばたきすらしない。聞こえないフリをしているのか? オッサンは丁寧に役も申告してあげた。「發ドラ3、だから8000」。するとバァさんが猫撫で声で聞いた。

「ねぇ♡ いつから發持ってたのよ?」

 オッサンは取り合わない。単にタイプじゃないだけなのかもしれないが。「8000」とまた繰り返した。

 大会なので時間制限がある。オッサンは親番を控えていた。だがバアさんもなかなかしぶとい。点棒を出すそぶりをまったく見せず、同じ質問をしてきた。

「あんたいつから發持ってたのよ?」

 よほど悔しかったのだろう。現実を受け入れるための時間が必要なようだ。オッサンもしびれを切らして答えた。

「一昨日から」

 私は必死に笑いをこらえながらバアさんの次の言葉を待った。しかし。バァさんはそんなトンチの効いたおっさんの返答には反応せず、もう一度繰り返した。

「あんたいつから發持ってたのよ?」

 長寿の秘訣。ときには聞こえないふりも必要なようである。

◆福山純生(ふくやま・よしき)1970年、北海道生まれ。雀聖アワー主宰。全日本健康麻将協議会理事。健康麻将全国会新聞編集長。好きな役はツモ。


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