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「秒で!」連発の若者も撃沈 定年祝いの「秒で!」役満

 麻雀にはドラマがある、特に役満には。各地のマージャン教室や大会に積極的に参加している「雀聖アワー」の福山純生氏に、ジジババが見せた伝説のエピソードを明かしてもらおう。

東1局

 定年を迎えた幸男さん、御年65。その労をねぎらうべく、妻の勝代さん(63)と幸男さんがいた部署に配属された新人の翔太(22)と卓を囲んだ。

 幸男さんは手役派で、翔太は鳴き派。勝子さんと小生は単なるエンジョイ派。幸男さんが渾身のリーチを放つたびに、翔太はお約束のごとくチーポンして、一発消しやらハイテイずらしに力を注ぐ展開。

 それでも悠然と打ち続ける幸男さんは「よく毎回鳴けるものがあるなぁ」と感心すると「秒でしょ秒!」と翔太。「びょう?」「秒単位の秒っス。瞬時に対応することを秒でって言うんスよ」と翔太は得意げだ。

「なるほど。『すぐやる課』みたいなものか」「なんスカ? それ?」「名前の通りだよ。何十年か前、地元の千葉県松戸市の市役所にできた課で、今でもあるんだよ」「なんかダサいスッね。あっ、それチー!」と意に介さない翔太。「とにかく秒でアガったほうが得っスよ、相手のチャンスも潰せるし。はいロン、1000点!」。

 スピードVS高打点。仁義なき戦いの様相を呈してきた卓上で、流れはスピードに傾きかけていた、かに見えた。

 翔太ひとりが3万点台のトップ目。1万点台のラス目で南4局の親番を迎えた幸男さんは配牌直後「定年祝いだな。きっと」とつぶやきながら手牌を倒した。「えっ、何? マジ? |天和《テンホー》!? 初めて見た!」と翔太をはじめ我々も前のめり。

「こういう時に使えばいいんだな?」

「何スカ?」

「ほら、秒で!」

 確かに天和こそ、麻雀最速のアガリ役。第二の門出を自ら祝福する役満炸裂。トップ目にいた翔太が「秒で」陥落したことは言うまでもあるまい。


続いてはこちらの役満のお話

東2局

 小生、いつものごとくロンされまくって迎えた南3局、北家。配牌で1・9・字牌が10種やってきた。国士無双成就のためには白と1索と9索と願っていたところに第1ツモは白。10巡目に白がまた来て雀頭ができた。

 上家は推定年齢60代、鉄壁の守備を誇るミサコ先生。元心療内科医の先生で、ヤミテン気配も敏感に感じ取られるご婦人だ。

 そこに親のマダムからリーチが飛んできた。リーチ宣言牌は9索。1索は河に2枚切られているが、9索は宣言牌の1枚しか切られていない。また幸いなことに、小生の余剰牌は親の現物の6索と8筒。「これはいける!」とイーシャンテンながら手が汗ばむ。

 するとミサコ先生が9索を手出しで切って来た。これで河には1索と9索が2枚。しかも8索はすでに4枚とも河に切られているので、他家で9索を使えるのは、9索待ちの七対子か、国士無双のみ。

 何よりミサコ先生が9索を切ってきたということは、国士無双には気づかれていない証だ。だが次巡、続けざまに9索を切られた。「対子落とし…あきらめるものか!」と己を鼓舞していたら、3連続で9索を切られ、ジ・エンド。「暗刻落としか~い!」と心が折れた矢先、ツモってきたのは1索。国士無双テンパイだが100%アガれない。

 そしてハイテイでツモってきたのは3索。親の現物ではないが、スジ牌だ。役満の夢はついえたが、せめてテンパイ形を見せることはできる。成就から披露へ。無駄に目標を変えた小生は3索を切った。「ロン! ハイテイ、リーチ、純チャン、三色で1万8000点~!」と白い歯を見せるマダム。

 役満テンパイ披露も叶わず、痛恨のフリ込みで箱下を食らう愚行。「せっかく4枚目の9索を見せてあげたのに、なんでオリなかったの?」とミサコ先生。言葉に詰まる小生に「最後の最後にテンパちゃって…見せたかったのね」とまさにおっしゃる通り。

 いただいた診断結果に癒やされた小生、哀れなり。合掌。

◆福山純生(ふくやま・よしき)1970年、北海道生まれ。雀聖アワー主宰。全日本健康麻将協議会理事。健康麻将全国会新聞編集長。好きな役はツモ。


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