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奈良・若草山「鹿せんべいとばし大会」で準優勝したものの…

 じわじわと、確実に、売れ始めているような気がしないでもないドキュメンタリー芸人・コラアゲンはいごうまん。東スポにおける〝実録連載〟を復刻しています。

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「行けー!」と夢中で叫びました。所属していたワハハ本舗の演出家・喰始たべ・はじめに「何かで優勝しろ」と命じられていたものの、ちゃぶ台返し世界大会が最下位全国穴掘り大会が89位と結果を出せていなかった僕は、奈良・若草山で行われた「鹿せんべいとばし大会」に全てを賭けたんです。

鹿が待ち受ける中で…

 直径20センチの競技用鹿せんべいを投げて飛距離を競うルール。ただし、せんべいが鹿に食べられてしまった場合、鹿の右前足までを測定します。200人を超える参加者の頂点に立つべく、僕は段ボールで作った擬似鹿せんべいを投げ込みに投げ込み、最高の仕上がりで臨みました。

 しかし、大会初日(1日ごとに優勝が決まる。その年の大会は3日間)、僕が投げた鹿せんべいを飛来したカラスが食べて失格。2日目もダメで、迎えた3日目。最後の手段で、あり金全部を投入しました。

 というのも鹿せんべいは1枚300円でお金を払えば何度でも投げれるんです。飛距離が伸びない僕はおかわりを繰り返し、気づくと28枚8400円を使っていました。鹿せんべい買い占め大会やったらダントツで優勝やのに…。

 とはいえ、タラレバは禁物。自らを奮い立たせて投げた29枚目、奇跡が起きました。鹿せんべいが風に乗ってグングン飛距離を伸ばしていく…そう、冒頭で書いた「行けー!」と叫んだ場面です。記録は48・75メートル、堂々の2位でした!

やりました!

 幾多の苦難を乗り越えての準優勝という結果を、意気揚々と喰さんに報告した僕。褒めてくれると信じていたのに、こう言われました。「お前の自慢話はムカつくからボツ(事務所ライブではやらせない)」。ム、ムカつくって…。

 しかも、この時の大会にはEテレの「Rの法則」が取材に来ており、番組から参加したアキヨシ君は4位。オンエア見たら順位報告の時、画面に1位オクモトさん、3位ササキさんに挟まれて「2位コラアゲンはいごうまん」という名前が…これだけインパクトある名前やのに司会の山口達也クンは僕に一切触れずに「オクモトさんすごいね」とだけ口にしました。いやいや、山口君のスルーっぷりの方がすごいわ! どんだけシュールな放送やねん!

これ、スルーできます?

 コラアゲンはいごうまん 1969年生まれ。自ら体験した出会いやエピソードで観客に爆笑と感動を与える実録ノンフィクション芸人。お笑いライブに加えて企業、医療、学校等で講演活動中。著書に「実話芸人」(幻冬舎文庫)。

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