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ボンクラ記者、不倫を考える。

先週金曜日のVoicyで堀江デスクと、国際政治学者の三浦瑠麗氏と脳科学者の中野信子氏の不倫をテーマにした対談記事についてトークしました。お二人が上梓された『不倫と正義』(新潮新書)をきっかけに行われた本紙の取材記事だったのですが、これがまあ面白い。

今や男性4人に1人が生涯未婚

不倫を面白いなんて言うと「不謹慎だ」なんて石が飛んできそうですが、不倫という行為を肯定するつもりはございませんので悪しからず。特に私が興味を持ったのは中野先生のこの発言です。

中野 先ほど言った通り、(人間の脳は)一夫一婦型にできてない。そうじゃない形のものを社会全体でバッシングする構造は大きな疑問がある。そういう問題提起をした時に二次的な反応として男性がすごい快哉を叫ぶ。

https://www.tokyo-sports.co.jp/entame/news/4159319/

もしも一夫多妻がスタンダードだとしたら、魅力的な男性が多くの女性と付き合ってしまい、凡人には結婚のハードルが著しく高くなるだろうし、結果として生涯未婚の独身男性が今よりも増えるに決まっています。ちなみに生涯未婚率を調べてみると、男性5.6%、女性4.3%だった1990年から30年が過ぎた2020年には男性25.7%、女性16.4%まで跳ね上がっています。今や男性の4人1人は生涯結婚しない、もしくは結婚できないのです。なのになぜ男性は一夫多妻を提案されたときに快哉を叫ぶのでしょうか?

人間の脳は一夫一婦型にできていない

これはもう本を読んで直接確認するしかありません。本屋さんにダッシュです。

ゴールデンウィークは本を読むのに最適です!

中野先生によると、一夫一妻型の種は哺乳類では3~5%と少数派、人間は一定の発情期もないからいつでもパートナーを探すことができるし、複数のパートナーを持つことが可能な脳を持っているのだそうです。そしてこう続けます。

中野 人間が、決まったパートナー以外のパートナーを探すという仕組みに関しては、複数の遺伝的な素質が関わっているので一概には言いにくいんですけれど、ある脳内物質に注目して、複数のパートナーに目移りしやすいタイプか、そうでないかの2つのグループに分けてみると、大体その割合は半々ぐらいになるみたいですね。
三浦 ある脳内物質
中野 アルギニンバソプレシン(AVP)という物質なんですが、脳内ホルモンの一種であるパソプレシンにアルギニンというアミノ酸がくっついたものです。(中略)このAVPの受容体のタイプによって、性行動に違いが出てくることが知られているんです。1人のパートナーといるのが心地よいタイプなのか、それともたくさんの人と薄く浅く関係を結ぶのが心地よいタイプなのか。後者はまあ「稼ぐ人」ですよ。
三浦 「稼ぐ人」とは?
中野 遺伝的な要素も関わってきます。ある遺伝子を持っているタイプの人では、未婚率、離婚率、不倫率が高くなる。この遺伝子の持ち主は、身内にはやや冷たい行動を取りがちになるためではないかと考えられています。一方で外づらはいい。そのため、社会経済的地位も上がりやすくなる。で、「よく稼ぐ」です。1人にこだわる気持ちが薄いからか、人脈を形成するのも得意で、その場限りの雰囲気を作るのも上手です。

中野信子・三浦瑠麗『不倫と正義』(新潮新書、2022年、20~21ページ)

なるほど。「一概には言えない」という条件付きではあるものの、AVPの受容体のタイプによって半分の人は他の人に目移りしやすいからだという点をすんなり受け入れるならば、パートナー以外との恋愛関係、そしてその先に不倫が頻発する現実も理解しやすくなる気がします。

中野先生は「壁ドン」がすごく嫌い

不倫について真剣に考える機会ってあまりないですよね。多くの人が不倫はいけないものだと認識していますが、一口に不倫と言ってもいろいろな形の不倫があることを読み進めるうちに気づかされました。私の世代だと、石田純一さんの「不倫は文化だ」発言がパワーワードとして頭の隅に残っているのですが、じっくり改めて考えてみると不倫発覚の開き直りはさておき、言葉が意味するところはあながち的外れでもないのかもしれません。不倫を考えることは人の性愛を考えることであり、家族制度や社会規範、倫理を考えることでもあるはず。最後に本書の中で一番面白かった壁ドンのくだりを紹介して終わろうと思います。中野先生は壁ドンがすごく嫌いだそうです(笑)。

三浦 飲み会の席などで男女間のトラブルが発生するのはよくある話ですが、「壁ドン」的状況に対して、女性がフリーズする場合もあれば、あるいはその恐怖を誤解して愛情だと勘違いしてしまう女性もいるということになりますよね? つまりは、男性がそういう「壁ドン的行為」に及ぶのは、それなりの打率があったということが背景にあるのかもしれない。でもそれだと女性の自主性は守れないんですよね。
中野 その男性なりに学習した結果なんだなって思うよね、どう考えてもそう思います。
三浦 セクハラで訴えられたりするような男性は、何がまずかったかが永遠に分からないタイプが多いんですけど、それっておそらく、女性全員が同じ反応をするわけないのに、それなりの打率だったもんだから訴えられるような行為であってもやり続けてしまったということなんでしょね。ただ、私は正直、男性の心理はどうでもいいというところがあって。だから、そんなの分かれよボケ、で終わりなんですけどね。

中野信子・三浦瑠麗『不倫と正義』(新潮新書、2022年、92~93ページ)

実に痛快!成功例を再び使うというのは身に覚えがありますが、世の中の男性はそんなに壁ドンを実践していない、壁ドンする勇気なんて持ち合わせていないと思ったのは私だけでしょうか。(東スポnote編集長・森中航)

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