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マンション管理と民主主義

今年4月から「マンション管理計画認定制度」がスタートしたことをご存じですか?

他の人に薦められた本を読むのも読書の醍醐味であります!

簡単に言うと分譲マンションの管理状態を自治体がチェックしてお墨付きを与えることで、そのマンションの市場評価が高まること、区分所有者の管理への意識が高く保たれること、適正に管理されたマンションの存在が地域価値の維持向上につながることが期待されており、認定されると、住宅金融支援機構の住宅ローン「フラット35」や共用部のリフォーム融資の金利優遇も受けられるそうです。

この制度の元となる「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」が改正されたのは20年6月。国交省の資料を読み解くとその背景がより具体的に見えてきます。

・築40年超のマンションは現在の81.4万戸から10年後には約2.4倍の198万個、20年後には約4.5倍の367万個となるなど、今後、老朽化や管理組合の担い手不足が顕著な高経年マンションが急増する見込み
・老朽化を抑制し、周辺への危害等を防止するための維持管理の適正化や老朽化が進み維持修繕等が困難なマンションの再生に向けた取組の強化が喫緊の課題

国交省「マンション管理適正化法の改正概要」から

どうやら日本では人口動態だけでなく、マンションも高齢化が問題となっていたんですね。そんなときに出会った本が『60歳からのマンション学』(講談社+α新書)で、著者の日下部理絵さんによると、建物も人間も共に老いていくことを〝二つの老い〟と呼ぶのだそうです。

マンションは戸建てのように自らの懐具合や人生のタイミングで修繕したり、更地にしたりできるわけではない。常に管理組合による合意形成というものがついて回ってくる。自分のマンションでありながら、自らの希望が必ず通るわけではない。マンションはすべてが多数決で決まる民主主義の世界なのだ。

日下部理恵『60歳からのマンション学』(講談社+α新書、2022年、8ページ)

仮に同じマンションを所有したとしても、実際に住んでいるかどうかで意識も違うでしょうし、経済力も異なるはずです。しかも10~15年に一度の周期で大規模改修が必要になることは知っていても、1回目よりも2回目、2回目よりも3回目のほうが金額が大きくなったり、年々建築に関する費用が右肩上がりになっていたりするという経験や知識を必ずしても持っているとは限りません。どう考えたって合意形成が難しいに決まっています。

とはいえ、都心部で戸建てが容易に買えるかというと土地が高すぎてまるで手が届かない(というか東京はすべてが高すぎて意味がわからない…)。結局、メリットとデメリットが混在しているからこそ、住宅環境をめぐっては「マンションか戸建てか」「新築マンションか中古マンションか」「持ち家か賃貸か」といった〝終わらない論争〟が数多く存在するのだなと感じた次第です。

30代、賃貸マンション暮らしの私はまだ「終の棲家」なんて想像したこともありませんでしたが、本書を読んでマンション管理がいかに一筋縄ではいかないものかを考えさせられる良いきっかけとなりました。

最後に家にまつわる素敵な昭和歌謡をご紹介しようと思います。
1971年3月20日にリリースされた加藤和彦4枚目のシングル「家をつくるなら」で、新居を夢見る歌は住宅メーカーのCMに採用されました。

家をつくるなら
家をつくるなら
草の萌えるにおいのする
カーペットをひきたいと
思うのであります

「家をつくるなら」(作詞:松山猛、作曲:加藤和彦、1973年)

〝築50年〟を超えている楽曲だが、エモい――。(東スポnote編集長・森中航)

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