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伝説の彫師に聞いちゃダメそうなことを聞いてみた

「笑点」でもおなじみの春風亭一之輔との二人会が大盛況のうちに幕を閉じたコラアゲンはいごうまん。当noteでは、自らの体験談を漫談にする唯一無二のドキュメンタリー芸人による東スポコラムを復刻しています。

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 それは所属するワハハ本舗の演出家・喰始(たべはじめ)に刺青取材を命じられた時のことでした。

 話を聞きに行ったのは、横浜で彫師をやられてる三代目彫よしさん(当時57歳)。ディック・ミネを武闘派にしたような容姿にビビりながら、自分の芸風は実体験をしゃべるガチ漫談であること、その例として地縛霊3人の前でネタやったら1人減って2人になったことなどを話すと「切ねぇな。不憫だから協力するよ」。そして「刺青はデリケートな話題だけど大昔の話なら触れてもいいだろう」と、ネタまで提供してくださったんです。

 彫よしさんが40年以上前に実際見た文字の彫り間違いで、ある人の腕の刺青見たら「男一匹」と思いきや、「匹」が「四」で「男一四」だった、と。大勢になってる!

 別の人の腹見たら「御意見無用」の行人偏がなくて「卸意見無用」

 ビックリしたんは、首から数珠をかけてる絵柄。胸から首の後ろに向かって数珠を一つ一つ、数か月かけて彫って前に戻ってきたらズレてたんやて。タルトの模様か!

三代目彫よしさん(2003年6月29日撮影)

 こんな話を食事をごちそうになりながら聞かせてもらえるなんて、何てありがたい。でも、そんな〝神対応〟の彫よしさんに、まさかあんな質問をする事になるとは…。

 というのも、彫よしさんの左手の人差し指がないんです! そら聞きたいですよ。けど聞かれへんやん。でも、その話を喰さんにしたら「ぜひ聞いて来て」…なんでや! しかし私が以前所属していたワハハにおいて喰始の言うことは絶対なんです。

 3日後、焼き鳥屋さんでブチ切れられる覚悟で質問しました。「なんで人差し指ないんですか?」。すると彫よしさんギヌロとにらんでこう言うたんです。

「アライグマにかじられた」

 えぇぇぇーっ!? ウソかと思いきやガチな話。昔、家で飼ってたアライグマとじゃれあってたらガブッとやられてもうたとか。

 ビビりつつもホッとしつつ、貴重なお話聞かせてもろたお礼に食事代を出そうとしたら「金は出さずに顔出しな」と口にした彫よしさん。この方が究極の手彫り技術を持つ伝説の彫師だということを僕はまだ知りませんでした…。

◆コラアゲンはいごうまん 1969年生まれ。自ら体験した出会いやエピソードで観客に爆笑と感動を与える実録ノンフィクション芸人。著書に「実話芸人」(幻冬舎文庫)。2024年1月24日、東京・内幸町ホールで単独ライブ「〝コラアゲンはいごうまんが語る、笑いと涙の人生劇場〟Vol.5」を開催する。

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