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あなたもやってる!?ツモ七癖

 あるある! いるいる! それだけじゃありません。そんな人いるの?というエピソードまで飛び出す当コラム。各地のマージャン教室や大会に積極的に参加し、ジジババたちの元気すぎる姿を目の当たりにしている「雀聖アワー」福山純生氏が、その生態をつづります。

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東1局

 なくて七癖。癖がなさそうに見える人でも7つは癖がある。それは昔も今も変わらない。

 麻雀の場合。癖が出やすいのは摸打モウター。1枚ツモって1枚切る。たったこれだけのシンプルな動作。しかし。あなたの周りにもいるのではなかろうか。特筆すべき摸打を繰り返す御仁が。

 まずは「オーバースイング型」。ゴルフにたとえると、テークバックが過剰なので、右利きの上家かみちゃ(自分の左側)にやられると毎回、その人の手が顔面にブツかりそうになる。

 お次は「選手宣誓型」。ツモるたびに腕が真上へ一直線に伸び上がる。ツモ牌が後ろの卓に飛んでしまうのではないかと心配になる。

 そして「加持祈祷型」。これもゴルフにたとえると、テークバックもフォローも大きいのだが、リキみすぎなので軸が左右にブレる。したがって、スイングプレーンはまるで神主。さらにモウ牌。モウ牌とは、ツモる際に牌の凸凹を指で触覚する行為のこと。牌が潰れるほど力を込める。指が折れないか心配になる。

 こういった特筆すべき摸打を行うのはジジイが多い。

 バアさんに多いのは「霊感打法」。常に何かに怯え続けながら摸打を繰り返す。リーチ後や終盤の攻防でビビりながら切る打ち手はプロでもいる。だが1打目から霊感打法なので、見えないものが見えているに違いない。きっと。

 いずれにせよ、かなりの体力を消耗するはず。運動不足も同時に解消しようという腹なのかもしれない。おそらく。マージャンはスポーツである…と言っても過言ではない。

東2局

「生きがいなの。アタシこれしかないの

 御年87。4人兄弟の真ん中で、5歳のときに家族麻雀でルールを覚えたバアさんの口癖である。雀歴82年。その歳月を遡ると1940年。日本が東京オリンピック開催を返上した年。東京2020オリンピック開催を考えると感慨深いものがある。

 バアさんの打ち方は、テンパイしたらとにかくリーチ。待ちの良し悪しは問題ではない。愚形だろうが、なんでもリーチ。リーチ棒は願い事を叶えてくれるお賽銭だと思っているのかもしれない。

 その日も朝から元気良くリーチをかけていたバアさん。対面の先攻リーチに無筋をビシビシ切って放った、渾身の追っかけリーチである。待ちは六萬と九萬の両面待ち。ツモにも力が入る。

 しかし。観戦していた私は気づいてしまった。対面が六萬も九萬もすでに暗カンしているではないか! どんなに力を込めても、どんなに祈りを込めても、バアさんがアガれる可能性はゼロ。カンに気づいていないのか。それとも、どんな状況でも自分のポリシーは変えないという意思表示の表れなのか。

 そんなことを考えながら見守っていたら流局。手牌が開かれた。対面のジイさんが驚いて聞いた。

「あんたワシのカンに気がつかなかったのか⁉」

 バアさん即答。

「私リーチが好きなの。生きがいなの。アタシこれしかないの

 あまりのバアさんの剣幕に何も言い返せなくなったジイさん。結局リーチ前、カンに気づいていたのかはどうかは分からずじまい。だがそんなことはどうでもよい。どんな麻雀を打とうが自由。生きがいであればなおさらである。

◆福山純生(ふくやま・よしき)1970年、北海道生まれ。雀聖アワー主宰。全日本健康麻将協議会理事。健康麻将全国会新聞編集長。好きな役はツモ。


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